会社を作って起業したい:「経営・管理」ビザ・在留資格
外国人が会社を経営するためには「経営・管理」ビザ・在留資格が必要です。
このビザの目的は2つあります。
- 経営者:社長、会長、CEO等
- 管理者:部長、支店長、工場長等
上記のどちらであっても「経営・管理」ビザが適用されるのですが、管理者である場合、実際に管理者である必要があるので、肩書だけ部長であっても、実際は社長と2人だけののような小さな会社では、管理者であるとはいえません。
大きな会社の部長、支店長、工場長などは対象となりますが、そのような場合はビザの取得が容易なので、ここでは割愛します。
ここでは自分で会社を作って、起業する「経営者」のためのビザを考えたいと思います。
「経営・管理」ビザの要件
「経営・管理」ビザの要件は、ざっくり以下の通りです。
- 500万円以上出資されているか、日本人か「永住者」を2人以上雇用していること
- 事業所を確保していること
法律的にはこの2つを満たしていれば、「経営・管理」ビザの要件を満たすことになります。
500万円出資されているか、日本人か「永住者」を2人以上雇用していることという要件の主旨は、「それなりの規模の会社の社長じゃないとだめですよ」ということです。それなりの規模というのが、資本金500万円以上とか、自分以外の従業員が2人以上ということです。
事業所を確保しているというのは、「事業の実態がないとだめですよ」ということですが、事業所を準備するという程度では「事業の実態がある」とも言い切れないので、最近の審査では、事業所の確保というのは最低限の条件であるとしか言えません。
最近「経営・管理」ビザはどんどん厳しくなっている
もともと「投資・経営」ビザというビザがあって、これが「経営・管理」ビザになったのですが、「投資・経営」ビザのときは、経営者は投資が必須でした。しかし、海外から優秀な経営者を日本に呼びたいという政府の意向があってから、必ずしも投資は必要ないということになり、ビザの名前も「経営・管理」になりました。
こうした法改正が行われた直後は、このビザの審査はとても甘くなり、500万円出資されていなければならないという要件は変わらなかったものの、その500万円がどこからきたのか、あるいは本当に出資されているのかどうかは審査されませんでした。
しかし、これを悪用する人たちが増えて、一時的に借りてきたお金で会社を設立するというケースが増加したことから、本当に500万円が出資されているかどうか、厳しくし審査されるようになりました。
またこのビザは、申請人の過去の学歴や経歴が問われないので、他の就労ビザを取得できない人たちが「金でビザを買う」という行為の対象に利用され、実際にはビジネスを行わないにも関わらず、会社を作ってビザを申請するという不正が多数起きたことから、「事業の実態がある」かどうかを厳しく審査するようになりました。
「経営・管理」ビザを申請するプロセス
起業するために「経営・管理」ビザを取得するためには以下のプロセスが必要です。
- 準備:会社の名前を決めたり、事業計画を練ったりする
- 会社設立:会社を登記する
- 事業所を契約したり税務署に各種の届出を行ったりする
- ビザ申請の書類を整理する
- ビザを申請する
準備:会社の名前を決めたり、事業計画を練ったりする
まずは、ビザとは関係なく、事業の準備をします。大事なのはどのような事業を行うかということです。中にはビザが目的で、事業はビザを取るためという人もいますが、本来は、やりたい事業を行うためにビザが必要なのです。
どんな商品やサービスを取り扱うのか、それを誰に販売するのか、他社との差別化はどうするのか、どのくらいの売上を目指すのか、どこで事業を行うのか、どんな体制で行うのか、どんな戦略・戦術でビジネスを行うのか等々を検討しなくてはなりません。
次により現実に、会社登記のために、会社名、目的、資本金、出資者、住所などを決めていきます。
こうしたことを詳細まで検討してから、実際に会社の登記を行います。
会社設立:会社を登記する
「経営・管理」ビザという観点からすると、必ずしも会社を設立しなくてもビザを取ることはできます。つまり、個人事業主であってもビザが取れるのです。しかしながら「500万円以上出資されていること」ということを考えると、資本金という概念のない個人事業の場合は、500万円以上を使っていないと500万円以上出資されていることにはならないのです。
最初からいきなり500万円以上を使ってしまう人はそうそう多くないと思いますので(個人で起業する場合)、結果として会社か何らかの法人を設立しないと「500万円以上投資された」ことにはならないのです。
株式会社か合同会社か
さて、法人の形態ですが、会社といえば株式会社がすぐに思いつきますが、最近は合同会社を設立するケースが増えてきています。それどころかアップルジャパンやアマゾンジャパンといった大手も合同会社になっています。
大手が合同会社を選択する理由は、ステークホルダーを少なくして意思決定を迅速化するという効果を狙っているということですが、これから起業しようとする外国人にとってのメリットは、設立費用が少なくて済むという点です。
株式会社の場合は、公証人役場で5万円、法務局で15万円の経費がかかりますが、合同会社の場合は、法務局で6万円の経費がかかるだけで会社を登記することができます。
一方で、どちらが「経営・管理」ビザの取得に有利かといえば、株式会社の方が経費が掛かる分、申請人の「本気度」が伝わるという点で、いくらか有利かとも思えますが、それほど大きく有利だということでもなさそうです。実際のところ、合同会社でも「経営・管理」ビザは許可されています。
総合的にどちらがおすすめかというと、私は合同会社をおすすめします。
何をするにせよ経費は少ない方がいいですし、どうしても株式会社にしたければ後から株式会社に変更することもできます(しかも、最初から株式会社を作るよりも安くできる!)。
合同会社の登記手続き
合同会社の登記手続きは非常にシンプルです。定款と必要書類を作成したら、法務局に提出するだけです。株式会社の場合は、定款を作成したらそれを公証人役場で認証してもらうという面倒な手続きがあるのですが、それは必要ありません。
法務局に書類を提出したら、約一週間で登記が完了します。
税務署に届出をする
会社の登記を終えたら、次に、税務署に届出を行います。税務署の届出書類のうち「給与支払事務所等の開設届」と「源泉税の納期の特例に関する申請書」の2つの書類の写しは、「経営・管理」ビザの申請の際の必要書類ですが、これだけ届出を行うということはないので、基本的にはこれらも合わせて以下の4種類の届出を行うのが一般的です。
- 法人設立届出書
- 給与支払事務所等の開設届
- 源泉税の納期の特例に関する申請書
- 青色申告の承認申請書
これらを2枚(コピーでOK)作成して税務署に提出すると、そのうち1枚に受付印を押して戻してくれるので、これを保管し、ビザ申請時にコピーを提出します(私は4枚全部出しています。)。
このあたりはただの手続きなので簡単ですね。
事業所を確保する
「経営・管理」ビザの要件において、「500万円以上が出資されていること」とならんで必要とされているのが「事業所の確保」です。
事業所というのは事業を行う場所なので、これから行おうとする事業にとって適切な場所でなくてはなりません。
ネットビジネスであれば小さな事務所スペースでもいいかもしれませんが、レストランを行うのであればレストランとしてのスペースだし、物販を行うのであれば店舗や在庫スペースなどが必要です。
「ビザがもらえるまで大きな出費を避けたい」といって中途半端なスペースしか用意しないようであれば、「本気で事業を行う意思がない」と受けとめられて不許可になってしまうかもしれないので、きちんと事業が行えるだけの場所を確保する必要があります。
「経営・管理」ビザの申請にあたっていちばん費用がかかるのが、この事業所の確保というところになるでしょう。
事業所のスペースを賃貸したら、外部内部の写真を数枚とって、どんな事業所かわかるような簡単な図面を作成し、事業所の賃貸契約書とともに、「経営・管理」ビザの申請書類とします。
「経営・管理」ビザの申請書類を整理する
事業計画書が最も重要
「経営・管理」ビザの申請書類のうち、事業計画書が最も重症な書類になります。