「特定技能」ビザ・在留資格の基礎知識
平成30年、秋の臨時国会で「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し、これにより新しい在留資格「特定技能1号」と「特定技能2号」が創設されました。
「特定技能」ビザ・在留資格は、これまで存在しなかった単純労働による外国人の受け入れを可能にする画期的な外国人ビザです。
臨時国会で議論されている最中でもこのビザに対する賛否がありましたが、そのほとんどが否定的なものでした。しかしながら否定の論理は、これまで単純労働外国人を受入れてきた「技能実習」ビザに対するものであり、「特定技能」に対するものではありませんでした。
「特定技能」ビザ・在留資格は、単純労働者の在留を真正面から受け入れるものであり、従来の「就労目的の技能実習」、「就労目的の留学」、「就労目的の難民申請」などの悪弊を根本から覆す可能性があります。
このサイトでは、「特定技能」ビザ・在留資格に関する法律や制度、実際の利用方法だけでなく、その歴史的意義についても考えていきたいと思っています。
「特定技能」ビザ・在留資格とは?
「特定技能」ビザ・在留資格は、外国人による単純労働への就労を認める在留資格として画期的なものとなります。これには介護や自動車整備士など、単純労働とは言い切れないものもありますし、他の仕事であっても単純労働と言うには失礼なものもあると思いますが、ひとつの分類として使わせていただきます。
これまでも、単純労働と言われる仕事に多くの外国人が従事してきましたが、これには2種類のアプローチがありました。
1つは、「永住者」や「定住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」などの、職業に制限のない「身分系在留資格」といわれるビザを持っている外国人が就労しているケースです。これらのビザを持っている外国人は風俗営業を含むどんな職業にも従事することができます。
もう1つは、本来の在留資格の目的とは異なるものの、これに特別の許可を付け加えたり、解釈を変えて単純労働に従事するというアプローチです。たとえば、「留学」や「家族滞在」といった在留資格を持っている外国人は、これに「資格外活動許可」を得ることで、週に28時間就労することができます。要は、アルバイトです。
また難民申請中の外国人は「特定活動」ビザ・就労資格を受けることができるのですが、これに就労許可を受けることで、就労することができます。しかし、これはあくまでも難民申請をして結果を待つまでの間に限り就労が許されるという特別な制度にすぎません。しかもこれが悪用されて就労目的の難民申請が多発し、本来救済されるべき難民の救済の妨げになるという問題が生じています。
そして、本来は就労ビザではないものの、就労とほとんど同じことができるのが「技能実習」ビザ・在留資格です。実習という名目での就労です。これには問題も多く、今後大きく見直されると思われます。
単純労働を真正面から捉えた画期的なビザ
「特定技能」ビザ・在留資格は、上記のような本来の目的とは異なるビザとは違い、単純労働を目的としたビザでであるという点で、日本の入管行政史上画期的なものとなります。
就労ビザですので(つまり資格外活動や「技能実習」とは異なり)、フルタイムで働くことができますし、転職の自由も認められてます。これによって、従来のアプローチで問題とされていた失踪者や行方不明者を減らしたり、立場の弱い外国人に安い賃金で重労働をさせたりするブラック職場を減少させたりする可能性があります。それにより、外国人による犯罪を減らすことが期待できます。
しばしば議論される外国人労働者についての問題は、これまで外国人による単純労働を真正面から受け入れなかったことに多くの原因があります。
「特定技能」ビザ・在留資格がどのように運用されるかにもよりますが、日本の人手不足を解消し、経済発展に寄与する可能性がある政策かもしれません。
「特定技能1号」と「特定技能2」号
新しい在留資格は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類がありますが、いきなり「特定技能2号」を取得することはできません。まず「特定技能1号」を取得してから試験を受けて、「特定技能2号」を取得することになります。
特定技能1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
特定技能2号:特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
国では、人手不足が深刻な14業種を「特定産業分野」に指定して、その14業種に限って「特定技能」外国人の受け入れを認めることになりました。その14業種は以下の通りです。
特定産業分野:
介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
在留資格「特定技能1号」と「特定技能2号」のポイント
在留資格「特定技能1号」のポイント
- 在留期間:1年、6ヶ月又は4ヶ月ごとの更新。通算で上限5年まで
- 技能水準:試験等で確認(「技能実習2号」を終了した外国人は試験等免除)
- 日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(「技能実習2号」を終了した外国人は試験等免除)
- 家族の帯同:基本的に認めない
- 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象
在留資格「特定技能2号」のポイント
- 在留期間:1年、6ヶ月又は4ヶ月ごとの更新。通算で上限5年まで
- 技能水準:試験等で確認
- 日本語能力水準:試験等で確認は不要
- 家族の帯同:要件を満たせば可能(配偶者、子)
- 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外
受け入れ機関について
特定技能外国人を雇用する会社(会社だけではありませんが。)を「受け入れ機関」といいますが、受け入れ機関はどんな会社でもなれるというわけではありません。意外とハードルが高いのです。
「特定産業分野」である14業種のうちのどれかに属していなければならないというのはもちろんですが、それ以外に、次のような要件を満たしている必要があります。
- 雇用契約が適切である
- 機関自体が適切である
- 外国人を支援する体制がある
- 外国人を支援する計画が適切である
雇用契約が適切である
「雇用契約が適切である」とはすなわち、特定技能外国人と取り交わす雇用契約については、以下のようにしてくださいというガイドラインがあることを意味していますので、以下の記載に従って雇用契約を作成してください。
「特定技能」外国人との雇用契約は、労働基準法やその他の労働関係法令の規定に適合していることに加え、以下の要件を満たす必要がある。
- 「特定技能」の要件を満たした業務に従事すること
- 通常の労働者の労働時間と同じであること
- 日本人と同等以上の報酬額であること
- 外国人であることを理由として報酬、教育訓練、福利厚生その他の待遇に差別的な取り扱いをしないこと
- 一時帰国を希望した場合には、必要な有給休暇を取得させること
- 派遣する場合は派遣先の名称(名前)、住所、派遣期間を明記すること
- その他特定産業固有の内容
- 雇用契約終了後に外国人が帰国の費用を負担できない場合は受入れ機関が負担すること
- 健康状況、生活状況の把握、維持のために必要な措置をおこなうこと
機関自体が適切である
受け入れ機関自体にも欠格条件があります。過去に外国人を不当解雇したり行方不明者を出したりしていた場合は、特定技能外国人を受け入れることができません。
特定技能外国人を受け入れるためには、機関自体が以下の条件を満たしている必要があります。
- 労働、社会保険、租税に関する法令等を遵守していること(労働保険、社会保険等)
- 特定技能雇用契約締結の1年以内に、該当する業務で外国人を解雇していないこと
- 特定技能雇用契約締結の1年以内に、外国人の行方不明者を出していないこと
- 欠格事項 (特定の法律違反、精神障害、破産、悪質ブローカー行為、暴力団構成員、未成年など)に該当しないこと
- 特定技能雇用契約に関わる外国人の活動の内容に係る文書の作成と保管(雇用契約書や計画書など)
- 悪質ブローカーの関与を知りながら雇用契約を結ばないこと
- 雇用契約の不履行等について金銭等の違約金を求めないこと
- 特定技能外国人支援の費用を本人に負担させないこと
- 労災保険等に加入すること
- 給与は原則銀行振り込みとすること
外国人を支援する体制がある
特定技能外国人を受け入れるためには、受け入れる機関はそれなりの体制を整えている必要があります。基本的には「支援責任者」と「支援担当者」という役割の設置が中心となります。
- 「支援責任者(会社に1人)」及び「支援担当者(事業所に1人)」を任命する
- 過去2年間に外国人を受け入れた会社の役員、職員から任命する
- 過去2年間に外国人の生活相談業務を経験した役員、職員から任命する(過去に外国人を受け入れたことのない会社の場合)
- 外国人が十分に理解できる言語によって職業、日常生活、社会生活上の支援を行う
- 一号特定技能外国人支援の状況に係る文書を作成し、保管する
- 「支援責任者」と「支援担当者」は、外国人を監督する立場にない者、中立な支援を行うことができる者で、欠格事項 (特定の法律違反、精神障害、破産者、悪質ブローカー行為、暴力団構成員、未成年者など)に該当しない者から選任する。
- 1号特定技能外国人支援を怠ったことがないこと
- 「支援責任者」または「支援担当者」が外国人やその監督者と定期的な面談を実施できる体制であること
1、2に準じた者から任命する(過去に外国人を受け入れたことのない会社の場合)
基本的には自社内で「支援責任者」と「支援担当者」を任命して、その人たちが「支援計画」を作成し、支援を行います。しかし、上記の通り「支援責任者」と「支援担当者」は、特定外国人を監督する立場にない者(つまり上司ではだめ)ということと、実際に支援計画を作成したり、それを実行したりする余裕がない会社の場合は、支援の全部を登録支援機関に委託することができます。
また、自社内で「支援責任者」と「支援担当者」を任命して、その人たちが「支援計画」を作成するものの、支援の一部を第三者に委託することも可能です。この場合、委託先は「登録支援機関」である必要はありません。
外国人を支援する計画が適切である
特定技能外国人を受け入れるためには、「支援責任者」と「支援担当者」が「支援計画」を作成する必要があります。作成した支援計画は、特定技能外国人を受け入れる際に申請するビザの申請書類に添付する必要があります。
1号特定技能外国人支援計画には、以下の事項を記載しなければならない。
- 在留資格認定証明書交付申請前に、活動の内容や上陸、在留のための条件等のオリエンテーションを外国人が十分に理解できる言語で行う(面談、ビデオチャット等で可)
- 空港等で外国人を送迎すること
- 住居の契約、預貯金口座の開設、携帯電話の契約等生活に必要な契約を支援すること
- 日本での生活、国や地方公共団体での手続き、相談・苦情の連絡先、外国語対応可能な医療機関、防災・防犯・緊急事態に対する対応、法令違反を知った時の対応方法その他大国人の法的保護に必要な事項などについての情報提供
- 国や地方公共団体での手続きに、必要に応じて同行すること
- 日本語を学習する機会を提供すること
- 職業生活、日常生活、社会生活についての相談・苦情に必要な措置を講ずること
- 日本人との交流の促進支援をすること
- 雇用契約を解除された場合、継続して活動できるよう支援すること(転職支援)
- 「支援責任者」又は「支援担当者」が法令違反等を知った時に関係行政機関に通報すること
- 支援計画の全部または一部を、登録支援機関等に委託する場合は、その機関に関する情報と契約内容
上記、1から11の項目全体を「1号特定技能支援計画」と呼んだり、単に「支援」と呼んだりしますが、各受け入れ機関で指名した「支援責任者」と「支援担当者」が一体となって、特定技能外国人を支援する必要があります。
全体的には随分と至れり尽くせりの内容となっており、受け入れ機関にとってはそれなりの負担となる内容です。受け入れ機関自体が「支援責任者」や「支援担当者」を任命できない場合は、「登録支援機関」に支援の全部を委託することができます。
登録支援機関について
特定技能外国人を雇用する受け入れ機関は、受け入れる外国人を「支援」しなくてはなりません。
そのために受け入れ機関は、原則、自社内で「支援責任者」と「支援担当者」を任命し、「支援責任者」と「支援担当者」は「支援計画」を作成し、支援を実施します。しかしながら、「支援責任者」と「支援担当者」は、特定技能外国人を監督しない者(上司ではだめ)とされており、場合によっては受け入れ機関と利害が反する第三者であることさえも求められています。
そこで、受け入れ機関は自社で支援をせずに、登録支援機関に支援の全てを委託することができるとされています。
登録支援機関の役割
登録支援機関は、以下のような役割を担うことになります。
- 登録支援機関の職員の中から「支援責任者」と「支援担当者」を任命する
- 「支援計画」を作成する
- 支援を実施する
- 「特定技能」ビザに関する申請を出入国在留管理庁(「入管」)に取り次ぐ
- 支援実施状況や変更事項等の届出をする
登録支援機関の登録
登録支援機関の「登録」とは、4月に組織変更された出入国在留管理庁(「入管」)に登録することを意味しています。登録支援機関に登録することを希望する企業や個人は、以下の要件を満たしている必要があります。
登録支援機関の要件
- 支援責任者と1名以上の支援担当者を選任していること(兼任可)
- 以下のいずれかに該当すること
- 登録支援機関になろうとする個人又は団体が、2年以内に中長期在留者の受け入れ実績があること
- 登録支援機関になろうとする個人又は団体が、2年以内に報酬を得る目的で、業として、外国人に関する各種相談業務に従事した経験を有すること
- 選任された支援担当者が、過去5年間に2年以上中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有すること
- 上記のほか、登録支援機関になろうとする個人又は団体が、これらと同程度に支援業務を適正に実施できると認められていること
- 1年以内に攻めに帰すべき事由により特定技能外国人又は技能実習生の行方不明者を発生させていないこと
- 支援の費用を直接又は間接的に外国人本人に負担させないこと
- 刑罰法令違反による罰則(5年以内に出入国又は労働に関する法令により罰せられたなど)を受けていないこと
- 5年以内に出入国又は労働に関する法令に関し著しく不正又は不当な行為を行っていないこと
登録支援機関の申請
主な提出書類
- 登録支援機関登録申請書
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 住民票の写し(個人事業主の場合)
- 定款又は寄付行為の写し(法人の場合)
- 役員の住民票の写し(法人の場合)
- 登録支援機関の概要書
- 登録にあたっての誓約書
- 支援責任者の履歴書、就任承諾書、支援業務に係る誓約書の写し
- 支援担当者の履歴書、就任承諾書、支援業務に係る誓約書の写し
特定技能外国人を雇用する
特定技能外国人を雇用するためにはどうしたらいいでしょうか? このページでは、特定技能外国人の雇用のプロセスをご紹介します。
基本的なプロセスは以下のようになります。
- 候補者を見つける
- 書類審査や面接を経て採用を決定する
- 雇用契約を締結する
- 事前ガイダンスを実施する
- ビザの申請をする
- 日本に渡航する(海外から来る場合)
- 空港等でピックアップする
- 生活オリエンテーションを行う
- 住居の世話をする
- 地方自治体で手続き及び)生活に必要な契約に係る支援
以下、これらのプロセスについて説明します。
候補者を見つける
特定技能外国人になることができる外国人は、「技能水準と日本語能力で必要となる試験に合格している者」か、「技能実習2号を修了している者」のどちらかになります。
日本語能力試験は、日本でも海外でも受けることができますし、JLPTというテストでしたら世界中で受験することができます。しかし、技能試験については、まだまだ実施される業種や国が限られています。したがって、「技能水準と日本語能力で必要となる試験に合格している者」を見つけるためには、どの産業の試験がいつ、どこで行われるかを確認しなくてはなりません。
その上で、自社で候補者を探すか、有料職業紹介会社を利用するかを検討します。あらかじめ、外国に採用やトレーニングのための事務所を作ることができる会社は自社で直接採用活動を行うことができるかもしれませんが、一般の会社は、一定の国を得意としている有料職業紹介会社を利用することになるでしょう。
また日本で試験を受けた外国人については、日本で見つけることができます。ただ、日本で行われる技能試験も当面は「外食」や「宿泊」に限定されており、他の業種は2019年秋以降となるようです。
一方で、「技能実習2号を修了している者」については、日本で「技能実習3号」として活動している外国人は別にすると、多くの場合、自分の国に帰っていると思われます。そうした外国人を採用する場合は、やはり有料職業紹介会社を利用することになると思いますが、中には技能実習の管理団体が有料職業紹介会社になっている団体もあるので、そうした有料職業紹介会社であれば、「技能実習2号を修了している者」の情報を多く持っているので、そうした監理団体兼有料職業紹介会社を利用するというのも効率的に候補者を見つける方法だと思われます。
書類審査や面接を経て採用を決定する
候補者を見つけたら書類審査(履歴書)や面接(ビデオチャットを含む)などを通じて候補者を絞り込みます。このあたりは一般的な日本の選考方法と同じだと思いますが、海外にいる候補者については、対面での面接はなかなかハードルが高いので、ビデオチャットを通じた面接が中心となると思われます。
書類審査にせよ、面接にせよ、外国で直接採用できない限り、有料職業紹介会社のサポートが必要となるケースが多いと思われます。有料職業紹介会社は、日本で許可を得た会社ですが、海外に支店(あるいは海外が本店である場合もあります。)があったり、海外のパートナーと契約していたりしています。そして、海外にいるスタッフが、候補者を探したり、必要に応じて日本語や技能の教育を提供したり、求人への応募をサポートしたりします。
雇用契約を締結する
候補者を絞り込んで、候補者の方も入社の意思を固めたら、次は雇用契約を締結します。雇用契約書の写しは、特定技能外国人のビザを取得する際に提出しなくてはならない重要な書類になります。
特定技能外国人を雇用するためには日本で一般的に使用されている雇用契約書の記載内容に加え、特定技能独自の記載内容が必要とされています。
この雇用契約の締結についても、有料職業紹介会社やその現地パートナーのサポートが重要となります。もちろん、日本に在留する候補者と契約する場合には従来通りの契約方法で構いませんが、内容は特定技能独自の記載内容となります。
事前ガイダンスを実施する
雇用契約書を締結したら、次はビザの手続きに進みたいところですが、その前に「事前ガイダンス」を行わなければならないことになっています。これはビザの申請人となる外国人が海外にいても日本にいても行わなくてはなりません。
内容としては「活動の内容や上陸、在留のための条件等」とされていますので、「特定技能」ビザの制度について、そのビザでできる仕事の内容、受け入れ機関や登録支援機関から受けることのできる支援、家族の帯同が許されないとか通算5年しか在留・就労できないといったデメリットや、逆に転職が認められるといったメリットなどを説明する必要があります。
これについては「外国人が十分に理解できる言語により対面又はテレビ電話を用いて実施」することとされていますので、一般的には日本にいる当該国出身のスタッフがビデオチャットで行うか、現地スタッフが行うことになります。
「事前ガイダンス」は日本にいる外国人を雇用する場合も行わなくてはなりません。多くの場合は留学生になるのではないかと予想されますが、この場合は日本語でガイダンスを行っても「外国人が十分に理解できる言語」とすることができる可能性があります。必ずしも母国語でなければならないと決まっているわけではないからです。
ビザの申請をする
海外に住んでいる外国人を雇用する場合は「在留資格認定証明書交付申請」を行います。日本に住んでいる外国人の場合は「在留資格変更許可申請」となります。
これらは、本人申請、受け入れ機関による代理申請が可能ですが、行政書士や登録支援機関が取り次ぐこともできます。
在留資格認定証明書交付申請が許可されて「在留資格認定証明書」が交付されたら、受け入れ機関(あるいは行政書士や登録支援機関)は、在留資格認定証明書を雇用契約書の写しなど必要な書類とともに、外国人本人か現地スタッフにEMS等の安全な郵便を利用して郵送します。外国人は現地の日本大使館にビザの申請書とともに日本から送られてきた書類を添付してビザの発給を申請します。ビザの発給が許可されたら、ビザが外国人のパスポートに貼付されます。
日本に住んでいる外国人の場合、「在留資格変更許可申請」が許可されたら、入管で、新しい在留カードへの切り替えを行います。
日本に渡航する(海外から来る場合)
渡航費については本人が負担するのかそれとも受け入れ機関が負担するのかについての明確な決まりはありませんが、渡航も業務の一部と考えることができるので、一般的には受け入れ機関が負担すべきものであると考えることができます。
一方、帰国については「雇用契約終了後に外国人が帰国の費用を負担できない場合は受入れ機関が負担すること」とされています。
空港等でピックアップする
空港等で特定技能外国人を送迎することも受け入れ機関の役割とされています。これも登録支援機関の支援に含まれますし、この部分だけ外部委託することもできます。
生活オリエンテーションを行う
特定技能外国人が入国した後あるいは在留資格を変更したら、受け入れ機関は「外国人が十分に理解できる言語」で「生活オリエンテーション」を8時間以上行うこととされています。
生活オリエンテーションは以下のような内容とされています。
- 本邦での生活一般に関する事項
- 法第19条の16その他の法令の規定により当該外国人が履行しなければならない又は履行すべき国又は地方公共団体の機関に対する届出その他の手続
- 特定技能所属機関又は当該特定技能所属機関から契約により一号特定技能外国人支援の実施の委託を受けた者において相談又は苦情の申出に対応することとされている者の連絡先及びこれらの相談又は苦情の申出をすべき国又は地方公共団体の機関の連絡先
- 当該外国人が十分に理解することができる言語により医療を受けることができる医療機関に関する事項
- 防災及び防犯に関する事項並びに急病その他の緊急時における対応に必要な事項
- 出入国又は労働に関する法令の規定に違反していることを知ったときの対応方法その他当該外国人の法的保護に必要な事項
住居の世話をする
受け入れ機関は特定活動外国人の住居の確保の支援をしなくてはなりません。住居情報の提供、契約のサポート、場合によっては保証人になる等の支援です。
しかしながら実際には受け入れ機関が何らかの手段で寮のようなものを確保して特定活動外国人に提供するべきでしょう。寮費にあたる費用についても、実際にかかった経費を超える金額を本人に負担させることはできません。
地方自治体で手続き及び)生活に必要な契約に係る支援
受け入れ機関は、特定技能外国人に義務付けられている地方自治体での住民登録等に対する支援や、銀行口座の開設及び携帯電話の契約などについての支援を行わなくてはなりません。
以上が、外国人の雇用から就業開始までのプロセスです。
特定技能のビザの手続き
特定技能外国人との雇用契約の締結が終わり、事前ガイダンスを行ったら、ようやくビザの手続きになります。
ビザの手続きといっても、その外国人が日本にいる場合と海外にいる場合とでは手続きがことなります。
日本にいる場合は、既に何らかのビザを持っているということですから、そのビザから「特定技能1号」へ変更するので、在留資格変更許可申請を行います。許可されるとこれまで持っていた在留資格に代わって在留資格「特定技能1号」となります。
一方、海外にいる外国人については、まず、在留資格認定証明書交付申請という手続きを行います。この場合許可されると、在留資格認定証明書という証明書が交付されますので、これを海外に住む本人に送り、本人はビザの申請書に在留資格認定証明書を添付して、日本大使館でビザの申請を行います。許可されるとビザが発給されます。
在留資格変更許可申請の必要書類
- 在留資格変更許可申請書 / 在留資格変更許可申請書
- 特定技能所属機関の概要書
- 登記事項証明書(法人)または住民票(個人)
- 役員の住民票の写し(法人)
- 決算書の写し 直近2年分
- 労働保険手続きに係る保管文書の写し等
- 社会保険手続きに係る保管文書の写し等
- 特定技能雇用契約書及び雇用条件書の写し
- 特定技能雇用契約に関する重要事項説明書
- 特定技能外国人の報酬額が日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であることの説明書
- 入国前に仲介業者等い支払った費用等を明らかにする文書
- 技能試験に係る合格証明書
- 日本語能力試験に係る合格証明書
- 特定技能外国人の健康診断書
- 支援計画書
- 支援委託契約書(登録支援機関に委託する場合)
- 支援責任者の履歴書、就任承諾書、支援業務に係る誓約書の写し(支援を自ら行う場合)
- 支援担当者の履歴書、就任承諾書、支援業務に係る誓約書の写し(支援を自ら行う場合)