最近、帰化申請が増えてきた? 帰化申請と永住申請を比較してみる
2019年7月頃から、永住申請に必要な書類が大幅に増えました。これまで3年分でよかった住民税の課税証明書と納税証明書は5年分提出しなくてはならなくなり、これまでは提出を求められていなかった国税の納税証明書も提出しなくてはなりません。さらに、これまでは審査されなかった年金の加入、納付についても求められるようになりました。
提出しなくてはならない書類が増えたということは、それだけ審査の基準が厳しくなってきたと言えます。
このような審査の厳格さ、厳密さの背景として、これまで比較的甘い基準で認めていた永住者の中には、税金を払わない者、生活保護を求める者、無年金者など、日本国民の負担になっている外国人が相当数いて、社会問題化しているからだと考えられます。
一方で、日本国籍の取得を認める帰化申請については、従来から国税の納付や年金への加入を求めており、比較的永住申請より厳しいと思われてきましたが、2019年からは永住申請の方が難しい場合があるという状況となってきています。
永住申請と帰化申請のどちらが簡単か、またはどちらにメリットがあるかは人によって異なりますので、ここでは永住(申請)と帰化(申請)を比較検討したいと思います。
永住(申請)と帰化(申請)を比較してみる
永住者と帰化のメリット、デメリットを考える
永住者のメリット
- 煩わしいビザの更新が不要
- 活動内容(仕事の内容)に制限がない
- 住宅ローンが借りやすいなど一定の信用がある
永住者のデメリット
- 犯罪等、退去強制に該当する行為をした場合は、退去強制の対象になる
- 日本以外の外国に行く場合は、日本人よりもビザなしで訪問できる国が限られる
- 日本から出国した場合、再入国期限までに日本に戻らない場合は永住権を失う
- 在留カードには期限があるので、カードの更新はしなくてはならない
永住者とはいえ、あくまでも外国人です。在留期間の更新をしなくてよく、活動内容に制限がないということを除いて他の在留資格の外国人と同じです。日本のパスポートを持つことはできませんし、何かあれば退去強制の対象にもなります。
帰化のメリット
- 日本人なので当然ビザの手続きから完全に開放される
- 活動内容(仕事の内容)に制限がない
- 日本のパスポートがあれば相当数の国にビザなしで訪問できる
- 犯罪等を犯しても日本国籍を失うこともないし、退去強制もない
- ネイティブな日本人と同等の信用力がある
帰化のデメリット
- 自国の国籍を放棄しなくてはならない
生涯日本に住むつもりであれば、自国の国籍を放棄しなくてはならないこと以外にほとんど帰化のデメリットはないと言えます。ただ、頻繁に母国に帰りたい人にとっては自国の国籍を放棄すると、長期間母国に滞在できないとう不利益があります。これが嫌で帰化申請をしない人も相当数いるようです。
永住申請と帰化申請を比較する
ここでは永住申請と帰化申請の「申請」そのものを比較検討してみたいと思います。
まずは永住申請と帰化申請の条件を箇条書きにします。法律や入管から出されてる文章はわかりにくいので、わかりやすく箇条書きにします。
永住申請の条件
- 素行が善良である
- 一定以上の収入あるいは資産がある
- 日本に10年以上住んでいる(「定住者」の場合は5年以上、「日本人の配偶者等」と「永住者の配偶者等」は結婚して3年以上で日本に住んで1年以上などなど、例外があります。)
- 申請時の在留資格の期間が3年以上である
- 国税、住民税を全て払っている
- 健康保険、公的年金を過去2年以上払っている
帰化申請の条件
- 素行が善良である
- 20才以上である
- 一定以上の収入あるいは資産がある
- 日本に5年以上住んでいる
- 国税、住民税を全て払っている
- 健康保険、公的年金を過去1年以上払っている
- 一定の日本語力がある
ここが違う永住申請と帰化申請
上記の条件を見ると、明らかに違う点はありますが、一見すると似たような条件であっても中身が相当違っていたりします。ここでは、永住申請と帰化申請の違いについて箇条書きで説明します。
- 収入や財産については、永住申請の方が厳しいです。扶養の人数によっても異なりますので、年収300万円以上とか簡単には言えないのですが、帰化の方が比較的低い収入でも許可されます。
- 収入や納税を証明するために、どちらも住民税の課税証明書と納税証明書の提出を求められますが、永住申請では5年分も提出しなくてはなりませんが、帰化申請では2年分だけの提出しか求められません。これは単に書類の問題ではなく、永住申請の場合、より長く安定した収入が求められるということを意味します。
- 永住申請の場合は申請時に3年以上の在留期間を許可されている必要がありますが、帰化申請にはそのような条件がありません。ただし、3年もらえない人はそれなりの理由があると考えられるので、帰化申請でも厳しく審査されます(マイナスポイントではある。)。
- 健康保険、公的年金については、永住申請の場合は2年以上、帰化申請の場合は1年以上の加入・納付が求められます。さらに違うところは、永住申請の場合、払い忘れた健康保険料をまとめて払うことは認められませんが、帰化申請の場合はまとめて払うことも認めています。
- 永住申請の場合、あくまでも外国人なので日本語能力を求められません。また申請書類に英語の書類が混ざっていても提出できます。しかし、帰化申請はあくまでも日本人になる申請なので一定の日本語能力が求められるとともに、申請時の書類は全て日本語で書いたり、外国の書類の場合は日本語に翻訳してから提出しなくてはなりません。
帰化申請には日本語能力が不可欠
帰化申請には日本語能力が不可欠です。たとえ日本人の配偶者であっても日本語能力がないと帰化することはできません。つまり、家族の中でお父さんと子供たちだけ帰化申請できて、お母さんだけできないなんていうことも起きてしまいます。
一般的には「小学校3年生ぐらいの漢字の読み書きができるレベル」と言われていますが、これはどのくらいのレベルでしょうか?
小学校1年で学習する漢字は70字、2年生で160字、3年生で200字なので、合計430字です。
これに対して日本語能力試験のN5とN4で学習する漢字はそれぞれ300字なので、N4までで合計600字となりますので、これだけ見るとN4であれば十分と感じます。
漢字のレベルだけではN4レベルでも可能性はありますが、N4レベルの日本語力では難しいでしょう。最低N3ぐらいだと思っていた方がいいと思われます。
どちらが自分に合っているかで決めるしかない
永住申請と帰化申請のどちらかをおすすめすることはできません。結局はどちらが自分の希望や置かれている状況に合っているかで判断するしかないでしょう。
ただし、日本語能力だけで決めてもいいのかと私は考えます。生涯日本に住むつもりであれば、他の何を差し置いても日本語の勉強をするべきなのではないかと私は思うのです。
生活でも仕事でも日本語能力が高ければ有利になります。日本語がわからなくても生活できている外国人はたくさんいますが、せっかく日本に来てまで小さな外国人コミュニティだけで生活するなんて矛盾しているのではないかと思うのです。