日本人と結婚した外国人は「日本人の配偶者等」ビザ・在留資格が取得できる
「日本人の配偶者等」ビザに該当する外国人
「日本人の配偶者等」ビザには「等」と付いているように、日本人と結婚した外国人だけでなく、日本人の特別養子や日本人の子として出生した外国人も含まれます。
「特別養子」というのは日本の民法に定める身分のひとつで、本当の両親との親子関係を解消して、養親との親子関係のみになる制度です。たとえば、本当の親の暴力がひどいなどの場合、特別養子になることができますが、養親は25歳以上、養子は6歳未満でなくてはならないなどの条件があります。
また「日本人の子として出生した」とは文字通り、生まれたときの実の親が日本国籍を持っていたという意味で、生まれた後に親が帰化して日本国籍を取得したという場合はこれに含まれません。
「日本人の子供なら日本人ではないか」と思われるかもしれませんが、日本人の父と外国人の母が結婚していないとか、生まれたときに日本国籍を選択しなかったとか、父親の戸籍に入らなかったとか、母親の母国で生まれたなどの理由で、日本国籍を持っていない場合などは、このケースにあてはまります。
しかし、「日本人の配偶者等」ビザでいちばん多いのは「日本人と結婚した」というパターンですので、ここでは日本人と結婚した外国人が「日本人の配偶者等」ビザを取得することについて解説します。
「日本人の配偶者等」ビザでもっとも重要なのは、偽装結婚でないことを証明すること
日本人と結婚した外国人が「日本人の配偶者等」ビザを取得するための法的な根拠は、その外国人と日本人が法律的に有効な婚姻関係にあるということだけです。また、「法律」というのは、大まかにはどこの国でもよくて、日本でも、その外国人の母国でも、場合によっては第三国でも構わないことになっています(ただし第三国の場合はしっかりと理由を説明する必要があります。)。
ただし、 「日本人の配偶者等」ビザを取得するためには、形式的に婚姻関係にあるだけではだめで、実態のある本当の結婚でなくてはなりません。
「偽装結婚」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは、本当は結婚する意志はないものの、「日本人の配偶者等」などのビザを取得するために、金銭等を目的として形式的に結婚することをいいます。
最近は多少減ってはいるかもしれませんが、今でも偽装結婚は後を絶たず、しばしば逮捕者が出たというニュースが報道されています。
入国管理局も「日本人の配偶者等」ビザの申請にあたって、この点を厳しく審査しています。
つまり、「日本人の配偶者等」ビザの申請でもっとも重要なのは、自分の結婚が本当の結婚であり、偽装結婚ではないということを証明することなのです。
「日本人の配偶者等」ビザの申請で厳しく審査されるパターン
夫婦の年齢差が大きい
夫婦の年齢差が大きい場合は厳しく審査されることがあります。どれくらい離れていると厳しく審査されるかについては、特にガイドラインがあるわけではありませんが、一般的に15歳以上離れていると厳しく審査されるようです。
この中でも日本人が年長で外国人が年少であるパターンが多いようです。
ただ、年齢差が大きいというだけですぐに申請が不許可になるということでもありません。年齢差がおおきくても本当の結婚はあります。あくまでも厳しく審査されるというだけで、年齢差が大きいことについての合理的な理由があったり、他に不利になる材料がなければ許可される場合もたくさんあります。
日本人の財産や収入がほとんどない
「日本人の財産や収入がほとんどない」といっても、外国人の方に財産や収入がたくさんあって、日本人が被扶養者になるというのであれば全く問題ありません。
しかし、 日本人と外国人の両方の財産や収入が少ない場合 、日本人の方がかなり年長で財産や収入が少ない場合などは厳しく審査されるでしょう。
こうした場合は、どのように生計を立てるのか、今後どうするかなどについて詳しく、具体的に説明する必要がありますし、場合によってはある程度の収入が確保できるまで(例えば就職するまで)申請を待った方がいいかもしれません。
出会いから結婚(婚約)までの期間が短い
出会いから結婚までの期間、あるいは婚約までの期間があまりにも短い場合も厳しく審査される原因になります。もちろん男女の問題なので、ひとめぼれするということもあるでしょう。これにつても「期間が短い」というだけですぐに不許可になるわけではなく、他の要素と合わせて審査されることになります。
また、出会いから婚約、結婚までの期間は数ヶ月あっても、その間、外国人は母国にいて、日本人は日本にいてといった具合に、直接会う交際期間が短い場合も不利になります。
家族の関与がない(ほとんどない)
一般的に結婚となると、事前に相手の両親や家族と会ったり、両家族で会食したりと、本人だけでなく家族も大いに結婚に関与します。また結婚式を挙げる場合であれば、両家族や親せきが集まるということもあるでしょう。
これが全くないかほとんどない場合も、不利になります。
日本で結婚するのですから、外国の家族とのコミュニケーションが難しいということもあるでしょうし、高齢での結婚であれば両親が亡くなっているということもあるでしょう。
しかし、両親や家族とのコミュニケーションや関与が全くないというのも、審査では大いに不利になります。
逆に言うと、外国人配偶者の母国を訪問したり、母国から日本に来てもらったりして、その渡航歴の証明や写真などが提出できれば、審査では非常に有利になります。
今はビデオチャットでもコミュニケーションを図ることができます。わざとらしくてもいいので、ビデオチャットを数回行って、それの記録を残しておいてください。
夫婦間の交流(の記録)がない
交際期間、婚姻期間を通じて交流、コミュニケーションの記録がないというのも審査においては非常に不利になります。
特に入国管理局では必須のように、電話、手紙、SNSでのコミュニケーション記録の提出を求めてきます。
また、外国人の配偶者が海外にいる場合、日本人配偶者がその国を訪問したり、外国人配偶者が日本に来たりした記録がないのも不自然です。交際期間であろうが夫婦であろうが、ある程度の訪問は自然なことです。
日本人配偶者に外国人との婚姻・離婚歴が多い
外国人が好きだと言ってしまえばそれまでなのですが、外国人との婚姻・離婚歴が多いのも審査上不利に働きます。
審査上の決定打になるほど大きなマイナスではないのですが、たとえば偽装結婚で繰り返し収入を得ているのではないかと疑われる原因にはなります。
どちらかの国でしか結婚していない
これは大きなマイナス要因ではありません。むしろ、夫婦の両方の国で結婚しているというこがプラス要因になると考えてください。
結婚というのは、どこかの国できちんと手続きすれば法律的には有効です。しかし、片方の国でしか手続きしないと、もう片方の国では独身であると取り扱われることになるので、不自然なことが発生するかもしれません。
したがって、通常の結婚では、片方の国で結婚したら、その後にもう片方の国でも手続きします。もし、これをしていないようであれば、その理由を説明しておいた方が無難です。
「日本人の配偶者等」ビザ申請の必要書類と追加書類
日本に既に住んでいる外国人が「日本人の配偶者等」ビザを取得するためには、在留資格変更許可申請を行ってビザの変更をします。一方、海外に住む配偶者を日本に呼び寄せる場合は、在留資格認定証明書交付申請を行って、在留資格認定証明書を交付してもらう必要があります。
いずれの申請においても申請書を除くと、必要書類や追加書類は似たようになりますので、以下の書類は、どちらの申請でも提出すべきものだと思ってください。
「日本人の配偶者等」ビザの必要書類
必要書類というのは法務省のホームページに掲載されている書類で、これがないと追加提出を求められたり、場合によっては申請できなかったりする最低限の書類です。
- 申請書(在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書) x 1
- 顔写真 H4cm x W3cm x 1
- 日本人配偶者の戸籍謄本(外国人配偶者との婚姻が記載されてない場合は、これに加えて婚姻届受理証明書) x 1
- 申請人(外国人)の母国での結婚証明書 x 1
- 日本人配偶者の住民税の課税証明書と納税証明書(日本人配偶者が申請人の扶養を受ける場合は、申請人の課税証明書と納税証明書) x 1
- 日本人配偶者が記入した身元保証書 x 1
- 夫婦で写っているスナップ写真 2、3葉
- 質問書 x 1
「日本人の配偶者等」ビザの追加書類
法務省で定めている最低限の必要書類は上記の通りなのですが、これだけ提出してすんなり許可がもらえることはめったにないと思われます。私としては、状況によって以下のような書類を用意するようにアドバイスしています。
- 理由書(結婚の経緯やその他説明を要すると思われることについてわかりやすく説明する。内容は状況によって大きく変わる。)
- 通信履歴(電話、手紙、SNS等の記録)
- 渡航履歴(相手の母国に行った等の履歴。パスポートのコピー)
- スナップ写真(2、3葉では足りない。夫婦だけでなく、家族や友人、結婚式や食事会などの写真を10葉以上)
- 手紙(家族、友人、会社関係者からの嘆願書)
「日本人の配偶者等」ビザを取るための書類作成方法
ビザの申請書類を作成する上で考えなくてはならない基本的なこと
これ以降は「日本人の配偶者等」ビザを取るための個々の書類の作成方法について検討していきたいと思いますが、全体的に大事なことを考えていきたいと思います。
冒頭にも書きましたが書類作成においてもっとも重要なのは、書類全体においてこの結婚は偽装結婚ではなく本当の結婚であるということを立証することにあります。
たとえば、同じくらいの年齢で、同じ職場で働いていて、親同士の紹介も済んでいて、盛大に結婚式を挙げたとしても、それを証拠を付けてきちんと伝えなければ入管には理解してもらえません。基本的に入管には「察してあげる」ということはないのです。
ましてや年齢が離れていて、収入が少なく、お互いの両親にもきちんと会ったことがなく、結婚式も挙げていないとなれば、それが真正の結婚であると第三者に信じてもらうのは非常に難しくなります。
出会いから交際期間、婚約、結婚までの流れ、結婚後の生活、仕事や経済状況、家族や親せきの状況などを第三者にもわかるように書類を作成する必要があります。
もっとも重要な書類「質問書」を作成する
質問書は、入管が用意している書類で、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」などの在留資格申請の際に記入が求められるもので、ここからダウンロードすることができます。
「質問書」作成につては、他のビザでも共通になりますので、別の記事として書きました。下記のリンクからご覧ください。
ほとんど必須書類となっている通信記録
交際期間から婚姻後の期間について、夫婦間でどのようなコミュニケーションを行ってきたかを立証するための書類は、ほとんど必須書類といっていいほど求められます。
二人が離れて住んでいる場合はもちろんとして、一緒に住んでいたとしてもある程度は形に残るコミュニケーションがあると思います。まして今やLINEなどのインスタントメッセンジャーで簡単にやりとりできるので、結婚後であってもそのような記録は残ることが普通でしょう。
ただ、あまり難しく考える必要はありません。入管は中身までとやかく言わないようなので、形式的に出せば大丈夫なようです。
重要なのは、交際期間から婚姻後までまんべんなく出すことです。
たとえば交際期間が1年で、婚姻後6ヶ月だとすると、2カ月おきに9回分ぐらい、LINEのスクリーンショットを2枚ずつ、合計18枚ぐらい印刷して出せば十分です。
離れて暮らしている場合は「渡航歴」が重要
特に外国人配偶者が海外にいて、日本人が日本にいる場合、「渡航歴」の提出は非常に重要です。
「入管なんだからそのぐらい把握してるだろ」と思ってはいけません。入管は自分から親切に調べてはくれません。
日本人が海外の配偶者を訪問する場合もあるし、その逆もありますので、パスポートの入出国のスタンプがあるページをコピーするとともに、別の紙で「20xx年xx月xx日~20xx年xx月xx日 xxxを訪問しxxxした」のような簡単な渡航歴のリストを書くといいと思います。
また、夫婦の渡航歴だけでなく、日本人の両親が外国の両親にあいさつに行ったとか、その逆に外国人の両親が日本に来たといった渡航歴もあれば出しましょう。
スナップ写真は2人が写っているものだけでは足りない
法務省のホームページには「夫婦で写っているスナップ写真 2、3葉」のように書かれているのですが、実際のところこれでは全然足りません(状況や人にもよりますが)。
偽装結婚する人たちというのは本人たちだけでこそこそやるのが一般的で、2人だけの写真では、真正の結婚であることを立証するには不足です。
2人で写っているものであってもイベント(誕生日、クリスマス、正月、旅行に行ったなど)ごとに撮影したものや、数人の友達と一緒に遊んでいる、宴会している、結婚を祝福してもらている写真、両親や家族と一緒に写っている写真など、さまざまなもの提出しましょう。
それらをA4の紙にコピーして、日時や何をしているかの説明を書く必要もあるでしょう。相手に伝わるように書類を作成します。
親や兄弟、場合によっては子供に「嘆願書」というタイトルで手紙を書いてもらう
親に手紙を書いてもらうというのも非常に有効です。これを出すか出さないかで大いに結果が変わることもあります。
たとえば母親に「最初に外国人と結婚すると聞いたときにはとても驚きましたが、会ってみるとxxxxxで、子供たちの結婚を応援することになりました。何卒、子供たちの幸せのために在留資格の許可をいただきますようお願い申し上げます。」みたいな手紙を書いてもらい、実印を押して、印鑑証明も付ければ完璧です。
結婚する外国人の母親のために、留学生で来日している息子に手紙を書いてもらったこともあります。
また、海外に住んでいる親に書いてもらうことも有効です。英語で書いてもらえるならそれでいいですし、他の言語なら英語が日本語に翻訳する必要があります。
これもサインしてサイン証明書を付けられるのであれば完璧です。
「日本人の配偶者等」ビザのケーススタディ
ケーススタディ1:日本人夫70代、スリランカ人妻40代で難民申請中
明らかに高難易度の案件ですが、日本人夫は前向きに婚姻意思がある様子です。年齢から言って普通の男女関係ではないと思われましたが、偽装結婚ともい思えず、婚姻の動機っていろいろあるのだろうなと思われるケースでした。
奥さんは難民申請中の「特定活動」ビザの持ち主です。一般的に難民申請中の外国人にはビザの変更は認められませんが、「日本人の配偶者等、「永住者の配偶者等」、「定住者」、「家族滞在」など、結婚に関係するビザであれば変更できる可能性もあります。
男性には娘もいて孫もいました。女性にも息子がいて日本で日本語学校に通っていることもあり、両方の家族で交流しており、大人数での写真もたくさんありました。これが1つめのポイントです。
ここでは夫の娘、妻の息子にそれぞれ「嘆願書」を書いてもらいました。これが2つめのポイント。
さらに男性には不動産があったのでその登記簿も提出しました。なぜなら男性にそうした財産があって、男性が亡くなった場合、妻がその財産の50%を相続できるからです。 それだけの覚悟があって結婚しましたという有力な材料になります。 これが3つめのポイント。
一度目の申請は不許可になりました。これは単純な書類上の矛盾で、以前に本人申請したときと今回の申請に書かれている内容が違うというのが不許可理由でした。これは夫の記憶違いだったので、二度目はこのことを説明した理由書を提出して、すんなりと許可がでました。
ケーススタディ2:日本人夫30代、中国人妻20代、技能実習生
日本人夫は、以前、中国人の彼女を短期滞在で日本に呼び寄せたいということで、当事務所で書類作成をしたことのある方でした。この方が「別の中国人女性と結婚したい」というご相談があって、本件、始まりました。
女性は技能実習生だったので、すぐの在留資格変更は難しいと思われました。ただ、今すぐに実習先の会社を辞めたいということでもなかったので、結婚はするものの、技能実習は継続することとし、技能実習が終了した時点で「日本人の配偶者等」ビザに変更することを提案しました。
その後、無事に3年間の技能実習を終了し、その時点でまだ技能実習のビザの期限に余裕があったので、在留資格変更許可申請をしました。
監理団体から技能実習を終了した証明書を発行してもらったことで、すんなりと許可がもらえました。
ケーススタディ3:日本人妻40代、パキスタン人夫30代、難民申請中
またしても難民申請中の外国人からの相談です。最初に相談に来られた時にはまだ結婚していませんでしたが、結婚してもらわないことには申請できないので、結婚して新居を探してと、それなりに時間がかかりました。
同じ職場で知り合ったということでその点はプラス評価です。奥さんのお母さんが協力的で、一緒に当事務所に来ていただいたり、写真に写ってもらったり、嘆願書を書いてくれたりしてくれたおかげで、すんなりと許可を得ることができました。