難民申請の「特定活動」ビザから他のビザに変更できるか?

従来、難民申請した外国人については、申請後6か月後から就労許可を与えて、難民申請の審査期間ににおいて日本で就労できることになっていました。ところがこの制度を利用した就労目的の難民申請が急増したことから、2018年頃から入管は、就労目的と思われる難民申請について厳しく審査するようになりました。

またその頃から、難民申請の「特定活動」ビザから他のビザへの変更許可をなかなか出さないようにしたのです。

↑ 最近、難民申請中の外国人でも条件が整えば就労系ビザに変更できるケースが出てきたようです。(2021年7月9日追加)

ここでは、どのような状況であれば、どのようなビザへの変更が認められるか、また、変更できないのであれば、新たにビザを取り直す意味での在留資格認定証明書交付申請が可能かどうかについて説明したいと思います。

難民申請の「特定活動」ビザから在留資格変更許可申請

難民申請の「特定活動」ビザから就労ビザへの変更は一切許可されなくなっています。2017年頃までは許可もでていたのですが、今では許可されません。就労ビザ全般ですので、「経営・管理」ビザなども許可されません。

一方で、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」といった身分系のビザについては許可が出ています。「定住者」や「家族滞在」についても、条件次第ではチャンスがあります。

難民申請のプロセスや理由も審査される

「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」といった 身分系のビザであれば簡単にビザが取れるわけではありません。身分系のビザは、難民申請とは関係なくもともと難易度が高いビザですし、難民申請中の人については、身分系ビザの該当性だけでなく、難民申請のプロセスや理由についても合わせて審査されます

プロセスや理由というのは、どういった状況でどういった理由で難民申請したのかということです。基本的には「留学」や「技能実習」といった他の中長期のビザで日本にいた人が、途中で学校や実習を辞めて難民申請をした場合には厳しく審査されます。

また、ビザの変更や更新ができなくなって出国準備ビザをもらった人が日本に残るために難民申請した場合も同じです。

逆に比較的易しく審査されるのは、母国で何かトラブルがあって(それが法律上の意味での難民に該当しないとしても)、「短期滞在」ビザを取って日本に来てすぐに難民申請したような場合です。

これは本来の意味での難民に近いプロセスと考えられるからです。

簡単に整理すると、何らかの中長期のビザを持っていて日本に在留していた人が難民申請をした場合には厳しく審査されることになります。

「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」への変更申請も万全を期して申請しなくてはならない

上述した通り、「日本人の配偶者等」や「永住者への配偶者等」への変更申請も簡単ではありません。もともと難しいビザなのですから、難民申請中の方についてはなおさらです。

「日本人の配偶者等」については、こちらの記事を参考にしてください。「永住者の配偶者等」に関してもほぼ同じ考え方で申請できます。

 

また、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」そして後述する「定住者」については、「質問書」が重要な書類になるので、以下の記事を参考にしてください。

 

「定住者」や「家族滞在」ビザへの変更も不可能ではない

「定住者」ビザを持っている人と結婚した場合は、「定住者」ビザがもらえる可能性があります。また、何らかの就労ビザを持っている人と結婚した人については「家族滞在」ビザがもらえる可能性があります。

難民申請中の人についても「定住者」や「家族滞在」ビザに変更できる可能性がありますが、これについても、難民申請をしたプロセスや理由を審査されますので、他のビザがだめだったから難民申請をしたという人は許可されません。

特に「定住者」はもともと難しいビザですので、より慎重に準備して申請する必要があります。

一方で「家族滞在」ビザは、もともとは難しいビザではないのですが、日本人や「永住者」と違って、本体者(就労ビザを持っている人)はあくまでも就労するために一時的に日本に滞在していると解釈できるので、どうしても夫婦を同居させるべきだという考えが働きづらく、難しいといえるでしょう。

「家族滞在」ビザについては「質問書」は必須の書類ではありませんが、同じように、2人の出会いから結婚までのプロセスや真正の結婚であることの説明、日本に滞在しなくてはならない理由、経済的背景などを「理由書」で説明する必要があります。

難民申請中を理由に不許可になった場合は、一度帰国して、在留資格認定証明書交付申請をするしかない

基本的に「難民申請をした」という事実を除いて特段悪いことがなければ、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」、「家族滞在」については、許可される可能性があります。

それでも 「難民申請をした」という事実をもって不許可にする事例もないわけではないですし、他の理由で不許可になる場合もあります。そのような場合は、再度難民申請するなどせずに、一度帰国して在留資格認定証明書交付申請をすべきです。

また、上述しましたが、ビザの変更や更新ができなかったからとか、「留学」や「技能実習」ビザを持っている人が、学校や実習先をやめて難民申請をした場合はビザの変更は不可能なので、一度帰国して在留資格認定証明書交付申請をしなくてはなりません。

一度帰国して在留資格認定証明書交付申請をする

難民申請をした人が就労ビザを取りたい場合や身分系ビザへの変更申請が不許可だった場合、あるいは難民申請をしたプロセスや理由が正しいものではなかった場合は、一度帰国して、在留資格認定証明書交付申請をするしかビザを得られる可能性はありません。

では、帰国後どれだけ経過したら申請できるかについてですが(申請するだけならいつでもできます。許可される可能性があるかということです。)、難民申請をしたという事実以外に特に問題がない人が就労ビザを申請する場合と、難民申請をしたという事実だけで身分系ビザへの変更申請が不許可になった人については、帰国後すぐに申請するか、あるいは帰国直前に申請することも可能です。

逆に、難民申請のプロセスや理由に正当性がない人については、帰国後1年程度経過してから申請しないと許可されることは難しいと思われます。

難民申請をした人が再入国するまでの期間については、特にルールがあるわけではありません。基本的に審査官の考え方や入管のローカルルールによって異なると思われます。