留学生の配偶者や子のための「家族滞在」ビザを申請する
「家族滞在」ビザについての基礎知識
「家族滞在」ビザは、下記のビザを持っている外国人の扶養を受ける配偶者または子として行う日常的な活動を行うためのビザです。
「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「留学」
就労ビザであっても「外交」「公用」ビザの配偶者や子には「家族滞在」ビザは付与されません。なぜなら「外交」「公用」ビザを持つ人の家族にも「外交」「公用」ビザにが付与されるからです。
「扶養を受ける」こととは?
「家族滞在」ビザの要件として「扶養を受ける」必要があることの理由は、日本において扶養を受けずに自ら収入を得る人は、他の就労資格を取得しなくてはならないからです。つまり、家族という身分で滞在するためには収入があってはないのです。
そして扶養を受けるためには、扶養者が扶養する意志を有し、なおかつ、扶養者が扶養できるだけの収入(財産)があることが必要です。
また扶養を受ける申請人には、扶養を受ける必要があるか、既に扶養を受けていることが求められます。配偶者であれば経済的に扶養者に依存している状態であり、子であれば扶養者の監護養育を受けている状態です。
たとえ年齢が成人であっても、学生である等の理由で親の扶養を受けていればこれに該当します。
「配偶者」「子」の意味
ここで言う「配偶者」とは法律上結婚している相手のことを指し、内縁関係は含まれません。また基本的に同性婚も含まれません。
「子」には嫡出子、非嫡出子、養子が含まれますが、実務上、「家族滞在」ビザの付与を目的とした養子と見られる場合は、「家族滞在」ビザの許可が出ない場合があります。
「家族滞在」ビザが取れる学校は、大学(大学院)と専門学校などです
「留学」ビザで日本語学校に留学している場合は、その配偶者や子は「家族滞在」ビザを取得することはできません。「家族滞在」ビザが取れるのは、大学(大学院)や専門学校に限られます。
他に「留学」ビザで、小学校、中学校、高校にも通うことができますが、これらの学校に通っている配偶者や子も「家族滞在」ビザを取ることはできません。
「留学」ビザの配偶者や子が「家族滞在」ビザを取得するのは難しい
前述したように、家族滞在は扶養者の「扶養を受ける配偶者または子として行う通常の活動」なので、扶養する者に扶養する経済的・資金的裏付けが必要です。
一般的に就労ビザを持っている人であっても、月の収入が18万円を下回ると難しくなってきますが、ましてや「留学」ビザで学んでいる学生は、週28時間までという就労制限があり、せいぜい月に10万円程度の収入にしかなりません。
もし申請人の財産や収入が日本でのアルバイトだけだとすると、配偶者や子が「家族滞在」ビザを得ることは、一般的には不可能です。
ただし、扶養者が何らかの特技を持っていて、時給3,000円のアルバイトができるとか、母国の会社から給料をもらいながら留学しているとか、実家の財産が多く十分に妻子を扶養できるとか、人によって資金状況が異なります。
ここでは、一定の資金がある留学生が、配偶者や子のために「家族滞在」ビザを取得するための方法や書類について検討したいと思います。
「留学」ビザの配偶者や子が「家族滞在」ビザを申請する
まずは卒業まで必要な資金を計算する
「資金的な裏付けが必要」といっても、どれだけの金額が必要でしょうか? これもよく聞かれるのですが、人によって異なります。
たとえば扶養者が大学1年生で、奥さんのために「家族滞在」ビザを申請するとして、卒業までざっくり残り3年あると考えることができます。つまり、卒業までの3年間どれだけの資金が必要なのかを計算する必要があります。
卒業までに必要な資金の計算例
- 学費:70万円 x 3年 = 210万円
- 家賃:6万円 x 12月 x 3年 = 216万円
- 生活費(2人で):10万円 x 12月 x 3年 = 360万円
卒業までに必要な資金:786万円
このような計算になります。就労ビザの人に比べると学費の部分が多くて、これだけでも大変です。
卒業までに得られる資金を計算する
上記の例では、大学1年の学生が卒業までに必要な資金は786万円でした。これに対して、今持っているお金とこれから得られるお金はどのようになるのかを計算する必要があります。
普通の大学生なら、週28時間までのアルバイトであれば、せいぜい月に10万円、3年で360万円です。したがって、786万円 – 360万円 = 426万円をどのようにするのかを計算し、立証していく必要があります。
一般的に資金・収入と考えられるもの
- 既に持っている貯金
- アルバイト収入
- 親や親類からの仕送り
- 奨学金
- 母国の会社の給料(会社のお金で留学しているなどのケース)
- 母国での何らかの収入
いかがでしょうか? 計算できましたか?
注意しなくてはならないのは、ここには配偶者や子のアルバイト収入を加算してはいけません。あくまでも「扶養を受ける」ことが目的だからです。
留学生の配偶者や子の「家族滞在」ビザのための立証書類
上記のように収入を計算しても、それが本当であると立証できなければビザは許可されません。たとえばこれまで親からの仕送りをもらったことがない人が、「親からの仕送り200万円の予定」とか、奨学金をもらったことがない人が「奨学金50万円」などと計算したところで、入管は信じません。
このビザに関して、入管は非常に細かいところまで立証書類をチェックします。
基本的に提出しなくてはならない書類は下記のようなものになります。これらは日本に来てからの全ての記録を提出する必要があります。
- 全ての貯金通帳のコピー
- 全てのアルバイトの給与明細
- 全ての課税証明書、納税証明書
- 全ての現金の持ち込みの記録(パスポートに記載)
- 母国やその他の親類からの全ての送金記録
- 全ての奨学金の記録(将来受け取ることが決まっている場合はその証明書)
- 送金者が両親以外の場合、その理由書と送金者の収入の証明書や在職証明書
- その他の収入に関する立証資料
- 学費の支払い実績、予定に関する資料
- 家賃についての立証資料(賃貸借契約書など)
立証できる資料がないとマイナス評価
上記資料のうち、たとえば「給与明細はなくした。手渡しなので振込明細もない」とか、「親からお金はもらっているが手渡しで、申告もしてない」とか、本当かもしれないのですが、提出できる資料がない場合はマイナスになります。できる限り資料を提出するとともに、提出できないものについては、きちんと「理由書」で説明しましょう。
親からの仕送りは先にもらっておく
これまで親からの仕送りがなかった人が、「今後仕送りがもらえる」と主張したところで信じてもらうことは難しいでしょう。この場合、先に送金してもらって、その記録を立証資料とします。この場合、親の収入の証明書や貯金通帳のコピーなどを提出した方がいいでしょう。
アルバイト収入が多すぎる場合
アルバイト収入が多すぎる場合は注意が必要です。週28時間の制限を超えていると疑われ、家族のビザどころか本人のビザの更新も危うくなります。時給が高くて収入が多い場合は問題ありませんので、この場合は、きちんと時給の説明をするとともに、時給について会社から何らかの書類をもらって提出する必要があります。
留学生の配偶者や子の「家族滞在」ビザのための必要書類
- 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
- 顔写真 H4cm x W3cm
- パスポートのコピー(在留資格認定証明書交付申請の場合)
- パスポート提示(在留資格変更許可申請の場合)
- 在留カード提示(在留資格変更許可申請の場合)
- 扶養者のパスポートのコピー
- 扶養者の在留カードのコピー
- 婚姻証明書(配偶者の場合)または出生証明書(子の場合)
- 家族全員の住民票(在留資格変更許可申請の場合)
- 扶養者の在学証明書
- 扶養者の住民税の課税証明書と納税証明書
- 全ての貯金通帳のコピー
- 全てのアルバイトの給与明細
- 全ての現金の持ち込みの記録(パスポートに記載)
- 母国やその他の親類からの全ての送金記録
- 全ての奨学金の記録(将来受け取ることが決まっている場合はその証明書)
- 送金者が両親以外の場合、その理由書と送金者の収入の証明書や在職証明書
- その他の収入に関する立証資料
- 学費の支払い実績、予定に関する資料
- 家賃についての立証資料(賃貸借契約書など)