コック、調理師の在留資格「技能」ビザ
コックだけじゃない「技能」ビザ。まずは概要を知ろう!
「技能」ビザと言えばコック、調理師が代表的な仕事ですが、それだけではありません。そもそもどういうものかというと、「仕事の経験を通じて身につけた技能」を活かした仕事をするためのビザです。
他に代表的な就労資格としては「技術・人文知識・国際業務」ビザというものがありますが、こちらは経験というよりは、大学などの学校で身につけた知識や技術を活かした仕事をするためのビザです。
「技能」ビザについては、次のようにできる仕事が明示されています。
- 調理師、料理人のうち外国で考案されて日本では特殊な技能
- 外国に特有の建築、土木に係る技能
- 外国に特有の製品または製造または修理に係る技能
- 宝石、貴金属、毛皮の加工に係る技能
- 動物の調教に係る技能
- 石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削または海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能
- 航空機の操縦に係る技能
- スポーツの指導に係る技能
- ワインソムリエ
上記のような技能を必要とする仕事については、それぞれ10年以上とか3年以上の実務経験があれば、その仕事をするために「技能」ビザを得ることができます。
コック、調理師の「技能」ビザ
「技能」ビザの代表格といえばコックや調理師です。以前は中華料理の調理師の独壇場だったのですが、ここ数年は、インド料理、ネパール料理などが増えています。最近はどこの駅前でもインド料理、ネパール料理のレストランがあります。
2年ぐらい前でしたか、入管の審査官と話をしていたところ、中華料理とインド料理・ネパール料理のコックの申請数は、どちらも年間1万件ぐらいで、同じくらいになっているとのことでした。
しかし、こうしたカレーのコックにはかなりの割合で偽者がいるということで、一説にはネパール人コックの95%は偽者だとのことです。95%は言い過ぎかもしれませんが、多くのネパール人も同じようなことを言っています。
そのためもあって、最近は「技能」ビザを申請する調理師については、とても慎重に審査しています。審査期間も長くなって、時期にもよりますが、半年近くかかることもあります。
半年もかかって審査が不許可になると、再申請したとしてもトータルで1年かかったりします。
しかし、当事務所は相当数のコックの申請を重ねてきており、事前に不安なところはできる限りなくして、スムーズな許可申請、許可取得ができています(ただし、申請人が嘘を重ねている場合は除きます。)。
コック、調理師の「技能」ビザの許可要件
コック、調理師の「技能」ビザの許可要件は、下記のうちいずれかに該当する場合です。
- 当該技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該料理の調理又は食品の製造に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者
- 経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定付属七第一部A第五節1(c)の既定の適用を受ける者
通常は、10年の実務経験が必要で、タイ料理については特例があると思ってください。
タイ料理人として「技能」ビザの要件は以下の全てを満たす必要があります。
- タイ料理人として5年以上の実務経験を有していること(タイ労働省が発行するタイ料理人としての技能水準に関する証明書を取得するための要件を満たすために教育機関において教育を受けた期間を含む。)
- 初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書を取得していること
- 日本国への入国及び一時的な滞在に係る申請を行った日の直前の1年間の期間に、タイにおいてタイ料理人として妥当な額の報酬を受けており、また受けていたことがあること
コック、調理師の「技能」ビザ。立証書類について
最重要書類、在職証明書(Employment Certificate)を確認する
「技能」ビザが実務経験を重視する以上、10年以上とか3年以上の実務経験を証明するための在職証明書が最重要書類となります。
原則的には全ての在職証明書を集めたいところですが、最低でも10年分など、必要な期間については提出しなくてはなりません。ただし、過去に勤めていた会社が既にないとか、特別な理由がある場合は、その旨を説明すべきで、偽造なんてもってのほかですので注意してください。
在職証明書の記載事項
- 会社名
- 住所や電話番号
- 法人番号、PAN番号、TIN番号などその会社が特定できるID番号(国によって異なる)
- 責任者名及び責任者の署名
- 発行日
- 申請人の氏名
- 申請人の雇用期間
- 申請人の業務の内容や役職
基本的に、上記全ての情報が必要だと思ってください。
3については、例えば日本の場合は、法人番号というものがあって、国税庁法人番号公表サイトで、会社名から法人番号を検索したり、法人番号から会社名を検索することができます。
なぜこうした番号が必要かというと、その会社やレストランが存在しているのかどうか、いつから存在しているのかを調べるためです。もちろん、国によって制度が異なりますので、そもそもこうした番号がない場合もあるし、番号があっても得られる情報が少ない場合もあります。
ただし、3以外は必須ですので、申請者から在職証明書が提供されたら、上記全てが記載されているかどうか、確認してください。
これまで働いていた会社(レストラン)に関して追加して提出する書類
在職証明書だけでは足りない場合があります。たとえば、法人番号のようなものが整備されていない国の場合、その会社(レストラン)が本当に存在しているか、いつから存在しているのかについて確認できる書類の提出が求められます。
これには、日本の登記簿に相当するようなビジネスライセンス(Business License)やトレードライセンス(Trade License)、保健所の飲食店営業許可書に相当する書類の提出を求められることがあります。
さらには、どこに存在するかを証明するためにGoogle Mapの画面を立証資料として提出することもあります。
コックやレストランの写真
コックやレストランの写真もほぼ必須書類ですので、以下のような写真を全部で10枚程度は提出する必要があります。
- レストランの建物の全景がわかる写真
- レストランの入り口や看板が写っている写真
- レストランの入り口や看板の前に申請人が写っている写真
- ホール(客席)のレイアウトや席数がわかる写真(アップではなく引いて撮影する)
- キッチンのレイアウトがわかる写真(アップではなく引いて撮影する)
- 申請人が調理している写真
よく、「申請人が調理している写真」だけ何枚も送ってくる場合がありますが、現在のレストランがどのようなところで、そこでどのように働いているのかを立証することが重要ですので、ぜひ、上記のようなさまざまな写真を用意してください。
これから働くことになる日本のレストランに関するさまざまな立証書類
保健所の営業許可証のコピー
飲食店を運営するためには、保健所による営業許可証が必要です。これのコピーを提出します。
メニューのコピー
何のお店なのかを証明するために、メニューのコピーを提出します。たとえば「今は中華料理しか出していないけど、これからカレーをやるのでインド人を採用したい!」というのではだめです。今やっていない事業で外国人を採用することはできません。
レストランの写真
レストランの写真も、建物全体がわかる写真、入り口や看板がわかりやすい写真、ホール(客席)のレイアウトや席数がわかる写真、キッチンのレイアウトがわかる写真などが必要です。
レストランのレイアウト図
必ずしも必要ではないですが、もし、内装工事などでこういうものを作っていれば提出しましょう。プラスにはなります。
ホームページや口コミサイトのハードコピー
もしレストランでホームページを持っていれば、これを印刷して提出しましょう。ホームページがなくても最近はぐるなびなど口コミサイトに掲載されることが多いので、こういうものを印刷して提出します。どちらもないと、存在を疑われることになります。
コックや調理師の「技能」ビザの必要書類
- 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
- 写真 H4cm x W3cm
- パスポートのコピー(在留資格認定証明書交付申請の場合)
- パスポート 提示(在留資格変更許可申請の場合)
- 在留カード 提示(在留資格変更許可申請の場合)
- 在職証明書10年分以上
- 現在働いているレストランや申請人の仕事中の写真
- これまで働いていたレストランの存在や設立が立証できる資料(ビジネスライセンスやトレードライセンス、営業許可証などのコピー。必要に応じて)
- 雇用契約書または労働条件通知書に申請人の署名があるもののコピー
- 日本の雇用先の登記事項証明書
- 日本の雇用先の決算書
- 日本の雇用先の前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)または四季報の写し(上場企業の場合)
- レストランの営業許可書
- レストランのメニュー
- レストランの外観、ホール、キッチンがわかる写真や図面
- レストランのホームページや口コミサイトを印刷したもの