「留学生の在留審査が厳格化」で日本は「選ばれない国」になる
留学生の在留審査が4月から厳格化されるそうです。
出入国在留管理庁(入管庁)は4月以降に日本への留学を希望する外国人の在留審査を厳格化する。出稼ぎ目的の入国を防ぐため、最終学歴の卒業証書や預金残高などの証明書を求める国・地域を10倍超に増やす。健全な外国人雇用の拡大のため、不法残留が増加している留学生をより厳格に審査し、特定技能制度の活用を促す狙いもある。
日本経済新聞
記事によると、これまでも 中国(香港など一部地域を除く)、ベトナム、ネパール、スリランカ、ミャンマー、バングラデシュ、モンゴルの7カ国・地域 については、在留審査において従来よりも多くの書類提出を求めていたが、これを4月以降は80カ国にまで拡大するとのこと。
実際、上記の国のうちネパールやスリランカ、バングラデシュなどについては、留学ビザの許可率が10%以下にまで落ち込んでいます。これを80カ国にまで増やすとなると、日本に来る留学生の総数がどれだけ落ち込むかわかりません。
このような方針を打ち出した背景として、就労目的の留学が増えて、学校を途中で辞めたり、卒業した後に不法残留する者が増加しているからということだそうです。記事によると「 2019年の年初時点で留学目的で入国を認めた外国人で不法残留しているのは約4700人。15年の約2800人から1.7倍に増えている。 審査なしで来日する人も多い短期滞在者(約4万7千人)や、失踪が相次いでいる技能実習生(約9千人)に次ぐ水準だ。 」ということだそうです。
現在日本に在留する外国人のうち、「留学」ビザで在留している外国人は
336,847人(構成比11.9%)(前年比 -0.05%)、「技能実習」ビザについては、367,709人(構成比13.0%)(前年比 +12.0%)なので(法務省ホームページより)、なので、「留学」ビザの不法残留率は1.39%で「技能実習」は2.44%となり、「留学」よりも「技能実習」の方が、不法残留率が高いことがわかります。
しかしながら、政府からは技能実習を減らそうという声は聞こえてきません。たしかに昨年「特定技能」ビザが導入されて、これにより自然に技能実習が減ると考えられていましたが、「特定技能」ビザの使い勝手が非常に悪く、導入が全く進んでいません。そのため「技能実習」が減るということもないのです。
「特定技能制度の活用を促す狙いもある 」とありますが、「技能実習」を放置したままで「特定技能」の活用が進むとは思えません。
確かに多くの留学生は、就労目的の留学かもしれません。しかし、日本にあこがれて日本で生活したいと考えていることは間違いありません。そのために一生懸命日本語を勉強して、お金を工面して日本に来ているのです。留学の目的が就労だっていいじゃないですか。それもあると思いますが、それは一面にすぎないと思います。
全体の1.37%が不法残留しているぐらいで、在留審査を厳密化し、留学そのものを許さないことなると、日本に行かれなくなった外国人は他国を留学先に選ぶようになります。すでにその傾向は出ています。日本に行かれないネパール人留学生はオーストラリアや韓国を留学先に選んでいるという話も聞いたことがあります。
実際のところ、「技能実習」にせよ「特定技能」にせよ、日本語能力については非常に低い人たちが来日して働くことになります。したがって多くの企業では、日本語が得意な留学生を社員として採用し、そうした日本語が苦手な外国人を指導したりマネジメントする業務に従事させています。
もし、留学生が圧倒的に少なくなったらどうなるでしょうか? 日本人従業員と外国人労働者の間を埋める人材が不足し、互いに不満を持つようになります。
その結果、日本は「選ばれない国」になっていくのではないでしょうか。